Twitterが死にそうな件

2023/7/2、全ユーザーのAPIのレートリミット制限を厳しくした影響で、Twitter1が瀕死状態になっている。

このような制限を始めたのは、スクレイピング2対策によるもので、 一時的なものであると主張している。しかし、その対策はスクレイピングに無関係なユーザーにとっても厳しいものとなり、 ただタイムラインを見るだけでも「問題が発生しました」や「API呼び出しの回数制限を超えました」が 表示され、「Twitterが終わるのか?」と一時騒然となった。 常時Twitterが欠かせないような、いわゆるツイ廃の人たちが一番影響を受けている。

スクレイピングが急増するのは自業自得である。 Twitterが提供するAPIを利用した方が無駄がないのだが、 APIによるツイートの取得(やその他操作)が有料化され、課金しても制限が厳しく実用的とは言えなかった。 元APIの利用者が、これまで通りできていたことを実現するためにスクレイピングするようになったのである。 ツイートを取得するためだけにウェブサイトから取得するのは効率が悪く、Twitterのサーバー負荷も増える。 こうなることはTwitterのシステムを運用している人間なら誰もが簡単に想像が付くはずである。 が、運用に関わる人はかなり辞めさせられているので、運用すらままならない状態になっていそうである。

それでも強行するのは、Twitterの経営を立て直すためである。 Twitter社3はイーロンマスクに買収される前から経営状態が火の車で、誰も何もしなかったら潰れていたのではないかと言われている。 今もその状態は変わっていないように見える4。従業員の半数近くをレイオフしたり、 Twitter Blueを機能追加して値上げしたり、 Twitter BlueからX Premiumに名称を変え、さらに有料プランを3つに増やしたりAPIを有料化したりしているが、 それでも広告主がTwitterから逃げ出して広告収入が6割減少したりAWSクラウドサーバー代が未払いだったりTwitter本社の家賃も未払いで家主から出て行けと言われていたりする。 黒字化するまでの道のりは果てしなく長い。5

Twitterからの避難候補

さて、いざTwitterが使えなくなった時にどこに避難したらいいのだろうか? 現時点での候補をいくつか出しておこう。

Misskey(.io)

分散型SNS6の1つ。その中でも特にユーザーが増えているらしい7。 Twitterの「いいね」の代わりとなるリアクションがとても独特で、 「レターパックで現金送れはすべて詐欺です」と言ったらMisskeyである。

Misskeyの中でもっとも大規模なサーバーはMisskey.ioであり、Twitterが大規模な障害を起こす度に話題になっている。 しかし、個人で運営されているサーバーであり、ユーザーの急増には手を焼いている。 新規ユーザーが増えるとサーバーの負荷が跳ね上がってしまうので、現時点では運営資金の支援者からの招待制になっている。 Twitterから流れてきたこともあり負荷が高い状態が続いており、サーバー設備の増強が行われるまではタイムラインの表示が遅く、不安定な印象である。 資金面、人的リソースの面のいずれも既に限界が来ているのではないか。 それがMisskey.io最大のデメリットなのかもしれない。

Mastodon

一昔前に流行した分散型SNS。最近は新興のMisskeyに押され気味だが、独特すぎるリアクション機能がない分見た目の印象では落ち着いた雰囲気だと思う8。 最近、とりあえずの所属サーバーとしてmastodon.socialが選ばれ、そこから簡単にアカウント登録ができるようになっている。 分散型SNSで悩みがちなサーバー選択をすっ飛ばして気軽に始められるようだ。

Bluesky

Twitterの創業者、ジャックドーシーが支援する分散型SNS。見た目がTwitterと似ているというのが最大の特長。 しかし、今のところは招待制で、招待コードがなければ新規登録ができない状態である。 こちらも新規登録者が急増し、サーバー設備増強が追いついていないと言われている。 最近クローズドベータになったばかりで、使える機能が少ない。たとえば、鍵垢にできないし、ダイレクトメッセージも送れない。 サービスとしてはまだまだである。

Discord

Twitterとは全く性質が異なるが、配信者がよく利用しているので、Discordの方が連絡が付きやすいのではないだろうか。

Instagram

雰囲気がTwitterと真逆なイメージ7で、ここに移るのは辛い気持ちになりそうな気がする。

mixi

え?今頃?

Facebook

実名必須。ハンドルネームで活動している人から見れば論外だろう。

Threads

FacebookやInstagramを運営するMeta社が新しく提供予定のTwitter対抗サービス。 2023/7/6サービス開始と、今のようにTwitterが不調なタイミングを見計らって前倒しで始まった印象を受ける。 あのMeta社が運営していることから、インフラ面は全く心配ないが、 中身はInstagramの一機能にすぎないことから、Twitterの文化とは相反するものでこれがTwitterの代わりとなるのかどうかは未知数。 Meta社の個人情報の扱いに不安を持つユーザー9やキラキラまぶしいInstagram8に吐き気を催すユーザーはまず移行しないのではないだろうか。

現時点では、スマホアプリでしか投稿ができないという筆者にとっては致命的な欠点がある。 Twitterのトレンドに相当するものがない、名前変更がInstagramと共有で不自由、 フォローも時系列も無視するタイムライン、ハッシュタグが機能しない、キーワード検索不可など、 Twitterの代わりと名乗るには必要な機能が足りていない。 リリースを急ぎすぎたので完成度はお察しください、ということか、それともInstagramの文化に合わせたものだからこういうものです、か。 Clubhouse10の二の舞だと言う人もいる。当面はTwitterの代わりにはならないと思う。

移行できるのか?

もしTwitterが使い物にならなくなり、移行せざるを得なくなった場合、最大の問題にぶち当たる。 それはフォロワーがどこに移行するかわからないということである。 ある人はMisskeyに、またある人はBlueskyに、別のある人はそのまま、と人によって意見が分かれ、分断してしまう。 また、分散型SNSなのにユーザー数の多い同じサーバーにアカウント登録が集中する現象が起きているせいで、新規登録が制限されているような状況である。 たとえ招待制でなくなったとしてもアカウント登録が面倒だし、多少なりにも使い勝手が変わるから慣れないうちは使いにくいと思うだろう。 また、移行することを知らず、消えたと誤認されるかもしれない。

ここへ移行すると決められればいいが、難しい。筆者もMisskeyが良いのかBlueskyが良いのか、 はたまたMastodonが良いのかは全然決められない。全部というのは面倒なことになるから無理だなと思うし、 本格的にTwitterが潰れてしまうまでは様子見となりそうである。

ほか、Twitterに世間の話題やニュースなどがトレンドとして上がってくれるおかげで、 情報収集がしやすかったのだが、Twitterから移行することで情報が分散されてしまい、 今後情報収集がやりづらくなったのは大変残念である。 こればかりは、どうにもならない。

個人的にはTwitterは潰れてほしくはないが、今のやり方のままでは支援する気になれない、というのが正直な感想である。


  1. 執筆時点(2023/7/6)ではまだTwitterだった。現在はサービス名称がXに変わっているが、ここではTwitterのままとする。 ↩︎

  2. ウェブサイトから必要なデータを抜き出して取得すること。 ↩︎

  3. Twitter社は既にX社となっているが、わかりづらいのでTwitter社と呼ぶ。 ↩︎

  4. 変わっていないどころかひどくなっているのでは? ↩︎

  5. 今回の一件と、ログインが必要な場面を増やしたことで広告を見るユーザーが減り、 広告の費用対効果がさらに悪化していることから、広告主離れが加速して広告収入がさらに減る可能性が高い。 黒字化はますます困難になるだろう。 ↩︎

  6. つぶやきなどのデータが一つのサーバー内に集まっておらず、 複数に分散されているSNSのこと。趣味ごとに複数のサーバーに分かれていて、 ユーザーが自分に合ったサーバーを選んでそのサーバーに登録する、という使い方となる。 サーバーが分かれていても別サーバーのユーザーをフォローできるのが、 Twitterなどのような一極集中のサービスとは大きく異なることである。 ↩︎

  7. ITmediaの記事によると、 「Slack・Discord的なコミュニケーションができるMastodon、ノリはふたばか2010年代のTwitter」らしい。 筆者はその頃のTwitterを見たことがないのでよくわからないが、それがウケているらしい。 ↩︎

  8. 個人の感想である。 ↩︎ ↩︎

  9. どうでもよいことだが、筆者はMeta社に電話番号を渡すと本名バレしたり、 ここでの活動が知人や仕事関係の人にバレるリスクが高いので絶対に近づかないようにしている。 (※Instagramのアカウント登録に電話番号は必須ではないから考えすぎだが) たとえThreadsがTwitterを抜くぐらいユーザーが増えても行かないだろう。 ↩︎

  10. 元招待制の音声SNS。本名必須、音声の録音やメモ書きさえも禁止というガチガチの利用規約、 テキストではなく音声のため距離感の取り方が難しかったからかは不明だが、流行が長続きせず、存在を忘れていた人がほとんど(筆者含む)。 ↩︎